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 風林火山の歌声は、やはり〝風〟さんと〝リーダー〟のハーモニーに尽きる。
 〝風〟さんは小学生の時に'大垣少年合唱団'でNHKの「五人と一匹」というドラマの主題歌を'デュークエイセス'と共演しており、CBC(名古屋放送)の歌番組では、銀賞を受賞しているエリートだ。

 〝風〟さんの声は「さだまさし」・「小田和正(オフコース)」調の高音の透き通った音色で、やや低めの〝リーダー〟のハーモーニーと良く合っていた。二人がうまく唄うとなかなか聞けるものがあり、そこにベースとドラムを合わせたのが風林火山の音楽である。そして、その5人の音をうまくミックスすることが筆者の仕事であった。

 演奏レパートリーの中にはオリジナル曲も数曲あり、作詞・作曲は〝風〟さんが担当。編曲とリード付は〝リーダー〟とI氏が、ベースは〝のんぺ〟リズムは山チャンが担当している。タイトルは「タバコ」「秋暦」「想冬(冬暦)」「セルロイドカラー」「別れ道」などがある。

筆者の好みであるが、「秋暦」「セルロイドカラー」が気にいっている。特にテンポのいい「セルロイドカラー」は、〝リーダー〟のリードと〝のんぺ〟のベースとの掛け合いが、なかなか聞かせてくれる。「秋暦」は完成度の高い曲で、筆者がミキサーをまかされる以前の曲だったので、誰か有名人の作ったものだと、ついこの間まで思っていたくらいである。

 これらの曲は音楽部門のCDに収録してあるが、「たばこ」「秋暦」はスタジオ版が見つからなかったのでライブ版から収録した。また、オリジナル曲の歌詞は音楽部門の小冊子に掲載してあるのでそちらを参照してもらいたい。

 風林火山の音楽は、〝風〟さん・〝リーダー〟の演奏が前面に押し出されているが、〝のんぺ〟のベースも注目してもらいたい。
彼は練習をしてうまくなるタイプではなく、天才的な勘が働くプレーヤーだと思っている。だから普段練習中には音をはずし隣のギターのコードを横目で見ながら弾ていてよくリーダーに叱られていた。
大丈夫かと心配しているこちらを尻目に、とにかく本番に強く、自分自身が盛り上がってくると本当にうまかった。
さらに創作力が高く、常に新しいフレーズを追加したり原曲のフレーズを変更したりしていた。それが結構その曲に合ったりして、なかなかすごい隠された才能の持ち主だった。

 筆者は「セルロイドカラー」のベースと「チャンピオン」のベースは絶品だと思っている。特に「チャンピオン」の場合はアリスのオリジナルより、〝のんぺ〟の創ったフレーズの方が好きである。

 〝山〟チャンは第二次風林火山で、ミキサーからいきなりドラムに変更させられたのであるが、どういう経緯でそうなったのかは知らない。しかし、これほど難しい楽器をよく承諾したものだ。
 初めてドラムを叩いたのは伊勢正三の「冬京」だと筆者は記憶している。
 この楽器の参入で風林火山の音楽に深みが出るようになった。ドラムの入っていない「冬京」と、ドラムが入った「冬京」では入った方が数段いい。従って、今回のCDにはドラムの入った「冬京」を収録させてもらった。

 完璧な演奏をやろうと緊張すると、逆にとんでもない音が出たり失敗したりする。この時のおかしさは何物にも替えれない。「笑いの妙技は緊張と緩和である。」と、この間亡くなった落語家が言っていたが、まさにそれだと思う。緊張した演奏の合間にする雑談はほんとに面白い。

 風林火山は演奏だけでなく普段の行動からしておかしいのである。それはおもしろかったら何でもやる総合エンターテインメントを目指すようにメンバーは洗脳されていた。もちろん主犯格はリーダーの〝神谷〟である。
 彼の行動力と統轄力はみごとであり、メンバーの目を常に目標に向けさせ、うまくまとめ上げていく。そして彼は企画屋でもあるため、当時のイベントはほとんど神谷が企画したものだった。ただし神谷は面白くするためなら相手を徹底的にいじめる。いじめられた方も負けじとやり返す、この繰り返しがそのうち快感に変わっていくのである。そして気がつくとすっかり神谷のペースに巻き込まれているのである。

 メンバー全員がこの集団催眠に陥った時こそ、風林火山が悪魔の集団に変身する時なのである。
なんと恐ろしい集団に筆者は潜り込んでいたのであろうか。次の項ではその恐怖の数々を明らかにしていこう。


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