Flash PICの起動

【3】回路図を描こう

電子工作をする上で避けて通れないのが回路図です。これから作ろうとしている回路を図面にしたもので、いわば設計図になります。重要なのは他の人が見ても理解できるように書かれてないといけません。
 おもな部品の記号を左に並べました。回路図には暗黙の了解で省略する部分がありますので注意が必要です。


 抵抗は損失電力が大きい場合に〝W〟(ワット)数を書きます。左の2段目は〝100Ω10W〟の抵抗を使うことを意味します。〝W〟(ワット)が省略されている場合は小信号用を意味しますので、暗黙的に1/6W~1/8Wの抵抗を使うことになります。

抵抗アレイは左の上のように中の抵抗をバラバラにして描く場合もありますが、ピン数が多くなると見にくくなりますので、下のように部品として描かれる場合があります。このとき部品名にピン数を書きますので素子数+コモンピンになることに注意します。(4素子の抵抗アレイなら5ピンになります。例では〝4.7K5P〟となっていますので、4.7KΩ4素子5ピンの抵抗アレイとなります)

 電解コンデンサは極性があり、耐圧も重要ですので〝+〟記号ともに書き込みます。使われるコンデンサの単位記号は〝 μF 〟か、〝pF〟ですが、スケマティックエディッタ(schematic editor)では半角文字を書く習慣になっていますので〝μ〟の場合だけ〝u(小文字のユー)〟を書く場合があります。さらに〝F〟が省略されている場合もあります。
 また、回路的に重要なバイパスコンデンサ(パスコン)を暗黙の了解的に省略して描かれる場合もありますが、スケマティックエディッタを使ってプリントパターンのデザイン用に正式に書くときに省略するとプリントパターン用のデータに現れませんので省略できません。この場合は回路図の隅に必要な数のパスコンを書き込んでおきます。

 ダイオードは矢印の三角形の頂点へ向かって電流が流れる(図では〝A〟から〝K〟へ)部品ですので描く方向が決まっています。三角形の頂点の先にある1本棒が描かれている側がカソード(K)で反対側がアノード(A)になります。〝K〟や〝A〟は省略して描きます。ツェナー(ZENER)ダイオードはカソードの1本棒が〝Z〟の文字になります。よく逆に描かれている回路図を見ますが正式には〝Z〟になるように描きます。ショットキーダイオードの場合は〝S〟の字になります。

 発光ダイオードは光が出ますので矢印で表現します。まわりの丸記号はパッケージを表していますが、省略されることもあります。光を表す矢印は省略できません。省略するとただのダイオードになってしまいます。

 トランジスタは型番が2SA~ 2SB~と呼ばれるものをPNPタイプと呼び、2SC~ 2SD~がNPNタイプとなります。エミッタの矢印の方向が逆になっています。また、ベース、コレクタ、エミッタなどの文字は省略されます。さらにトランジスタの型番、例えば〝2SC1815〟なら〝C1815〟と〝2S〟の部分を省略して書くこともあります。

 スイッチには極性はありませんが、端子が複数ある時は、通常(スイッチから手を離している時)コモン(COM)端子と接続されている側を〝NC〟、離れている側を〝NO〟と書きます。リレーの接点の場合、リレーOFFでコモンと接続されている接点をb接点。リレーONでコモンと接続される接点をa接点と呼びます。これらを2つを組み合わせたリレーの接点をc接点と呼んでいます。(左の2段目)リレーのカタログに〝接点は2c〟と書かれていたら、a,b接点を持つc接点回路が2組ある2回路2接点ということになります。


パワーオブジェクトは電源に接続する部分を記号にしています。GNDに接続する記号は矢印を下に向けて描きます。斜線を引いてシャーシを表す描き方もありますが最近は下向き矢印が主流になっているみたいです。〝GND〟の文字を省略する場合もあります。
 電源を供給する記号は丸に棒を突っ込んだような記号で、下に流れるようなイメージで描きます。マイナス電源の場合は反対になります。そして電源電圧を書くのが正式です。GNDのように矢印で描く場合もありますが、区別するために必ず電源電圧を描きます。マイナス電源の場合は下向き矢印になります。
 供給電源を〝VCC〟や〝VDD〟という記号で書くこともあります。〝VCC〝などの小文字の〟C〟を連続に書く意味が厳密には定義されていますが、長くなるので簡単に説明しますと〝V〟は電圧(ボルト)、〝C〟はコレクタ端子を意味しています。コレクタ端子に供給する直流電圧という意味になります。〝D〟はドレイン端子で・・・となりますが、いまの段階ではVCCやVDD、VEEは供給電源の文字記号と覚えておいても問題ないと思います。ただし、回路図のどこかに〝VCC=+5V〟などと書いておかないと意味が伝わらない場合があります。

 ワイヤーオブジェクトは部品どうしを電気的に接続するライン類のことです。通常はライン(線)で部品どうしを結んで回路図を描きますが、ラインがクロスしているのか、ラインどうしを接続するのかをはっきりさせるために、接続するときは交点にジャンクションという黒丸を描きます。ジャンクションが無い場合は単にクロスしているだけで電気的な接続を意味しません。

 スケマティックエディッタでラインを引くと自動的にジャンクションが置かれますが、意図しない場所に付く場合がありますので注意が必要です。


 また、回路図が複雑になってくるとラインだらけになり、非常に見にくくなってきますので、同じ信号線などをバスエントリーを通してバスラインと呼ばれる1本の太いラインにして、接続先で再びバスエントリーを通してもとの複数のワイヤーへ戻して部品に接続するように描くことがあります。この時にどのワイヤーが接続先のどのワイヤーに当たるのかを明確にするために、ネットラベルという名前を対にして書きます。

 回路図内の離れた位置にある接続先までワイヤーを引っ張って描きますと、非常に見にくくなりますので、ワイヤを長く引き廻さずに、ネットラベルを使って開始位置と接続先に同じラベル名を書くようにします。このようにするとスッキリとした回路図が描けますが、あまり多用すると他の人が見たときに分かりにくくなりますので注意してください。
 プリントパターン用のネットリスト(部品の接続情報データ)が出力できるスケマティックエディッタの場合、ラインを引くのにエレクトリカルワイヤーとグラフィカルラインの2種類がありますが、電線を表すラインはエレクトリカルワイヤーで描かなければネットリストに反映されません。



 回路図はできる限り、信号が左から右へ、上から下へ流れるイメージで描きます。ですので一般的には、左側に入力回路が右側に出力回路が来るようにすると綺麗な回路図が描けます。


 回路図を見る場合で最も注意することは、汎用デジタルICなどの電源ピンは省略して書くのが慣例になっています。これはスケマティックエディッタの場合でも省略されていますので、データシートなどで確認する必要があります。新しい部品をスケマティックエディッタに登録したときも電源ピンの確認をしておかないと、プリントパターンが完成してから配線されていないことに気づくという最悪のケースになることがあります。また、汎用ICで使わない入力ピンが回路図に描かれていない場合もあり、そのまま製作すると入力ピンがオープンになったままで、妙な動きをしてしまうことがあります。特にC-MOSのパーツでは要注意です。入力ピンをオープンのままにしておくと、消費電流が異常に流れたり発振を起こしたりして回路的には間違っていないのに異常動作を起こします。入力ピンはGNDに落とすなどの処置が必要です。

 このあたりのことを踏まえて、汎用のデジタルICの74HC00を使った簡単な回路図を描いてみました。
デジタルIC回路例
 この回路はスイッチ入力のチャタリングを取り除いた信号をコネクター(CN1)のFOUT端子から出力するもので、回路図には深い意味は無く簡単な例です。

 回路図 A、Bともに同じものです。どちらの回路図が解りやすいと思いますか?
 回路図 Aは部品を上から見た感じですので、配線順序が直感的に解りやすいですが、回路の意味が解りにくいです。ビギナー向けの回路図では実体配線図と呼ばれる、部品を絵にして配線図を描いていくものがありますが、回路図 Aはそのパターンに近いです。回路図 Bは74HC00のロジック回路(論理回路)をMIL記号であるNANDで描きこんだもので、ひと目見てどのような回路になっているかが伝わってきます。使わない入力端子をGNDに落としている部分やパスコン(0.1uのコンデンサ)なども目に映った瞬間パスコンだということが解ります。配線時の注意書きなども回路図に書いておくことも大事です。回路図 Aにもパスコンが描かれていますが、パスコンなのか特別な用途のコンデンサなのかが直感で解りません。さらに、回路図 Aではワイヤーがたくさんの場所でクロスしていて、非常に解り辛いです。回路図 Bでは少し無理やりですが、ラベル名を使ってワイヤーのクロスを避けています。

 簡単な図面なら回路図 Aでもいいのですが、他人に見せたときや、何年も経ってから見直したときには非常に解りにくい配線図になっています。回路図 Bはスケマティックエディッタ向けの描き方で、74HC00の電源ピン、7番(GND)14番(5V)が省略されていますので注意が必要ですが、この図面を描いたCADにネットリスト出力があれば、このままプリント基板のパターンデータが作成可能になります。

 回路図 A、Bともに74HC00は〝U1〟という部品番号が付けられていますが、回路図 Bではさらに4つのロジックをパートナンバーで別けられています(U1A~U1D)。正式なスケマティックエディッタではこのあたりも自動的に割り振りされますが、U1AとU1Bを組み合わせて回路を作りたい、などの時のために後で任意に割り振り可能になっています。


補足:ロジック記号で書かない例


↓2008.01.04に追加されました
 では汎用ICはすべてロジック記号で描くかというとそうでもありません。データバスバッファに多用されるICには同じロジック回路が6~8個入っている場合があります。これらはほとんどの場合において、まとまった使い方をされますので、回路図に描くときはICの形で描きます。例えば下図は74HC273という型番のICですが、〝D-FF〟というロジック回路が8個入っています。
デジタルIC回路例2
 左側は部品を上から見た状態でICのピン配置が描かれています。青矢印が入力端子、赤矢印が出力端子です。これをそのまま回路図に描くと入出力が入り混じってとても汚い図面になりますので、信号の流れに合わせてピン番号を並べなおします。右の図は左側に入力を右側に出力が来るように描いたものです。バスライン(太いライン)とネットラベル(赤文字)を合わせて使うとスッキリとした回路図が描けます。

 汎用ICではなくPICなどのワンチップCPUはプログラムによって入出力が変わりますので、そのつど描き替えていると余計に混乱してきますのでそのまま描くようになります。次回はプログラム(ソフト)と回路(ハード)の話に入ります。


【3】回路図を描こう ----------(ここまで)