お品書き
- ・ 初めてのCINEMA 4D Lite
- ・ 複雑怪奇なマネージャ構成
- ・ 混乱するショートカット
- ・ クセがすごいぞ C4D L
- ・ ライトと影と反射物
- ・ カメラ
- ・ AEとの連携
- ・ ヌルはヌルなのに。レイヤーはなぜ?
- ・ 回転は迷宮への路 その1
- ・ 回転は迷宮への路 その2
- ・ 回転は迷宮への路 完結
- ・ マテリアルと投影法 その1
- ・ マテリアルと投影法 その2
- ・ マテリアルと投影法 完結
- ・ 様々な物体を作る
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- ・ ブタさんを作る
- ・ モーグラフを使う
- ・ PCBを作る
- ・ デフォーマを使う(波打つ廊下)
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- ・ ペーパーアニメーションを考える
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- ・ 球体鏡の内部へ
- ・ もしも鏡がうねったら
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回転は迷宮への路 HPB回転を理解する(1)
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さてさて、3D作業を始めていまだにペーペーのランクから脱出できない原因は、ここにあるかもしれないと思われる回転操作です。とくにキャラクターもののキーフレームアニメーションにとって回転は鬼門です。
ここから先は、時系列に沿ってどうやって問題点を解いたのかをお話し風に書き綴りましたので、少々長いです。お急ぎの方は 【12】回転は迷宮への路 完結、の最後の方まですっ飛ばしてください。
それではまずキーフレームアニメーションに登場するキャラクタの構造からご覧ください。
『壊れた時計』に登場する『赤ネジくん』の 階層構造です。全部で 37個のパーツからなっています。
C4D Lは廉価版ですのでインバースキネマティクス(IK)機能はありません。そのため、『子は親に従う』のルールを利用して腕や頭、足などを動かしています。中でも腕が肩から手の平まで完璧な階層になっているのは、肩の関節が回転すると手の平の先までが追従して動くからです。
しかし IKが無いのは痛いですが致し方がありません。 親方は AE ですから。
写真の番号は、キーフレームが打たれるオブジェクトとその位置を対にしてあります。
ようは関節みたいな部分です。すべてが一度に動くことはめったにありませんが、強いていえば、歩くシーンは苦労します。両腕、肘、手のひら、両足、それからボディの浮き沈みなどが発生します。
名前の欄に『KF』と書かれたパーツは、このオブジェクトにキーフレームを打っていることを書き表しています。パーツがとても多いのでいざ動かそうとするときに、どのオブジェクトを動かしていいのか分からなくなるからです。ここを秩序よく作らないと先に進むほどに支離滅裂になって、最終的にキャラクターアニメーションは破綻します。
次に注目してもらいたいのは、両腕の関節以外はすべてヌルが使われているところと、ボディが①と②に分かれているところです。①は赤ネジくん全体を包んだヌルで、②は両足を省いた全体を包むヌルになっています。
ボディ全体と、両足を除いたボディを分ける理由は、歩くときにボディが浮き沈みします。その動きに両足が一緒に動いたり、ボディを前傾にしたときに、足の裏が地面から離れるのを防ぐためです。
ようやく本題に入ります。次の説明の中心になる部分です。
以前書かせていただた部分を思い出してください。AEのようにアンカーポイントなるものが、C4Dには見当たらないと、どうやって手の平を翻したり、ボディを傾けたりしたらいいのだ、という話です。
やっとその説明をするときが来ました。
最初にこの写真をご覧ください。
チョークみたいな灰色の物体を出してみました。周りの景色は 立体感を掴みやすいように 置いてあります。場所は地球上のどこか、そして誰かの部屋の一角だという設定です。
長さ 10cm、太さ 6mmの円柱です。赤・青・緑の 3D軸がオブジェクトのセンターに出ています。
この物体を後ろに倒してみましょう。
ありゃりゃ。空中に浮いてしまいました。これでは国際宇宙ステーションの機内です。まさか状況を宇宙空間に変えるわけにはいかないので、何とかしなければいけません。
原因は回転軸がセンターにあるからです。
AEではこの場合、アンカーポイントをずっと下に移動して、底辺の隅っこあたりを回転軸したはずです。そうすると底辺の角を軸にして回転しますので、最終的にテーブルの表面に側面が当たります。
探しましたが、C4D Lにはそのような手段がありませんでした。『軸を有効』というアイコンがありましたが、これをオンにしても軸だけを動かすことはできません。動かすとオブジェクトもくっついてきます。
そこでペーペーは考えました。AEでさんざんやってきた、ヌル救世主様の降臨祈願です。ヌルを親にした子は、それに従う、という鉄則です。
これが正しいのかどうかは解りませんが、特に問題なく動きますので、ワタシはヨシとしました。
それではそれ専用のヌルを作ります。この方法以外にも やり方はある と思いますが、これが何んとなく手慣れた感じがして、職人ぽいので好きです。
まず、先ほどの OMで円柱を選択後、
"Alt+G" で円柱を子にしたヌルの親を作ります。
作ったらすぐに子になった円柱を階層から引き出して、親子の縁を切ります。
「はあ? なにしてんの? 何のために親のヌルを作ったん?」
不思議に思うかもしれませんが、ここにトリックがあるのです。
最初に "Alt+G" で円柱を子にしたヌルの親を作ると、作られたヌルの角度は変化しませんが、その座標には円柱の座標が読み込まれ、円柱の座標が X、Y、Zともに『0』になります。
この理由を AEで親子関係にする方法と照らし合わせて考えてみます。
AEではまずヌルを作り、それを子になるオブジェクトの回転軸か、センターに移動させてから親子にしていました。そして親子になった途端、子の座標は絶対値ではなく、親からの相対値、ようするに親の位置を原点にした距離になります。
C4Dでは "Alt+G" ひとつで、そこまでしてくれているのです。置かれる位置は子となるオブジェクトのセンターです。
ですので、子となるオブジェクトを選択してから "Alt+G"でヌルを拵えると、そのヌルは子のセンターに作られ、逆に子の座標は相対位置、つまり親の位置を原点にした距離、この場合は同じなので距離『0』となり、X、Y、Zともに『0』になります。
これで "Alt+G"の説明になっていると思います。
話を続けます。
次に親子の縁を切りますので、子の座標がもとの絶対値に戻ります。続けてヌルを子になるオブジェクトの回転の軸になる位置へ移動してから親子にします。すると親のヌルはその場所を絶対値として維持。子の座標は親からの距離として相対値としてセットされます。
はあ~。しんど。
これが親子を切ったり入れたりした理由です。
で……。こんな感じになりました。
後ろに倒すのなら、円柱の真後ろの角が回転軸になりますのでそこへヌルを移動。
そして場所が決まったら、再び円柱をヌルの子に戻して親子関係を築きます。
階層から外したり入れたり、無駄のような仕草なのに、やっていることは意外と深いのです。なんか 職人ぽい 、ですよね。
で、動画にしたのがこれ。
地球で見る光景と同じ動きなりました。
あとはもう少しリアル感を出してやると……。
このように回転の軸となる部分にヌルを使って、その中に包含するようにパーツを包み込んでいくので、AEと比べて、より多くのヌルを使うことになります。
さて――。
ここまではペーペーでもできました。
問題はこの後でして。アニメーション化したキャラクタは、ストーリが進むにつれてあらぬ方向へ体を回転させたり、ひどい時には地べたに寝転んだりします。
そんなときに訪れるのが、回転の魔術に翻弄される摩訶不思議な現象。気づいたときには手遅れ。魔界の深部に踏み込んでいます。
何度、正解を出そうと四苦八苦しても、最終的には疑問符だらけで終わってしまいます。ひどいときは苦労して作ったキーフレームアニメーションをやり直す羽目に……。
次回、苦渋の告白をお読みください。