お品書き
- ・ 初めてのCINEMA 4D Lite
- ・ 複雑怪奇なマネージャ構成
- ・ 混乱するショートカット
- ・ クセがすごいぞ C4D L
- ・ ライトと影と反射物
- ・ カメラ
- ・ AEとの連携
- ・ ヌルはヌルなのに。レイヤーはなぜ?
- ・ 回転は迷宮への路 その1
- ・ 回転は迷宮への路 その2
- ・ 回転は迷宮への路 完結
- ・ マテリアルと投影法 その1
- ・ マテリアルと投影法 その2
- ・ マテリアルと投影法 完結
- ・ 様々な物体を作る
- ・ 太陽系を作る
- ・ ブタさんを作る
- ・ モーグラフを使う
- ・ PCBを作る
- ・ デフォーマを使う(波打つ廊下)
- ・ 枯れ葉よ~
- ・ ペーパーアニメーションを考える
- ・ アナモルフィック
- ・ 平行投影
- ・ 球体鏡の内部へ
- ・ もしも鏡がうねったら
- ・ ファンタジーな世界を作ろう1
- ・ ファンタジー(2) カメラワーク
- ・ カメラを滑らかに走らせる
- ・ トラブルコレクション
- ・ Cinema 4D Lite FAQ
- ・ My Portfolio
AE(After Effects)との連携
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どんなに C4D Lでリアルな映像を拵えようとも、R19までは AEの下(もと)でないと起動すらできませんでした。R21で単体起動ができるようになりましたが、やっぱり親方は AEなのです。C4D L単体では動画にエンコードできませんし、静止画でさえ出力できません。残念ですが、これが廉価版の宿命でどうしようもないのです。でも AEには持ち込めます。そうなったらこっちのモノ。作った映像へさらに手を加えてから mp4にすることができるのです。
では、C4D Lのファイルを AEに取り込む方法です。
その前にレンダリング設定とタイムラインのフレーム範囲バーを先に説明させてください。
AEに送られる映像は【このビューをレンダリング】にチェックが入っているビューで、送られるフレームは写真のタイムラインにある緑枠で囲ったフレーム範囲です。写真では 600フレームから、1088フレームまでの映像が AEへと送られますが、AEでは『0』フレームから並びます。
そして映像の大きさはレンダリング設定の【幅】【高さ】のピクセルになります。
レンダリング設定の【フレームレンジ】は【画像ビューワー】へレンダリングする範囲を示しており、写真では『プレビュー範囲』つまり、タイムラインの緑枠のフレーム範囲が【画像ビューワー】へレンダリングされます。
画像ビューワーの説明も必要かと思いますので、ここでさせていただきます。
【画像ビューワーへレンダリング】
Liteでは保存することができないのですが、製作したアニメーションやオブジェクトを正式な状態で見るためのビューワーのようです。
起動方法はウィンドウメニューの【レンダリング】メニュー内の【レンダリングして画像ビューワーに】を押すか、ショートカットキー【Shift + R】です。
正式なというのは、レンダリングボタンでもビュー内をレンダリングできますが、そうではなくてレンダリング設定で行った画像サイズで、完成された映像が見ることができるビューです。
レンダリング設定の【フレームレンジ】が『現在のフレーム』の場合は再生ヘッドのあるフレーム 1枚分の状態が画像ビューワーへ送られますが、写真のように『プレビュー範囲』の場合は、タイムラインフレーム範囲(上記写真の緑枠)が画像ビューワーへ送られますので、それなりにレンダリング時間が掛かりますので注意してください。
いよいよ大詰め。まずは AEを立ち上げます。
AEが起動したら、新規にプロジェクトを作り、新しいコンポジションを設置します。コンポジション設定で行う画像サイズやフレームレートなどは C4D Lのレンダリング設定で行ったものと同じにします。映像の 尺 (デュレーション)もC4D Lのタイムラインよりも 少し長めに しておきます。
さてこれから少々戸惑うことが起きるかもしれません。それは何をやるにも、とんでもなく重たくなることです。
何キログラム?
ではありません。パソコンが 死にます 。
C4D Lではサクサク動いていたアニメーションのファイルを AEに取りこんだ途端 、パソコンが沈黙します。どれぐらい意識を失くすのかは、パソコンのスペックによります。
ここからは、ここにあるパソコンでの結果となりますので、参考になさってください。
Win10、64bitCPU:i7-7820X、RAM:32GB SSD:480GBで、GPUは GTX-1080です。
では、気持ちの準備ができたら、"Ctrl+I" あるいは【ファイル】→【読み込み】→【ファイル】で C4D Lのファイルを選択して読み込みます。もちろんファイルの拡張子は『c4d』です。
その瞬間パソコンが黙り込みます。しかも "選択したアイテムを読み込んでいます『応答なし』" とメッセージを出して。
思わず壊れた? と焦りますが、大丈夫です。これで正常なのです。
しばらくするとパソコンが息を吹き返しますので、プロジェクトウインドウに入った C4D Lファイルをレイヤーパネルにドラッグします。
今度も少々待たされて、ようやくコンポジションウインドウに絵が出ました。
妙な具合です。C4D Lでレンダリングすると美しかった映像が、なぜか一部真っ黒けです。でも安心してください。これはレンダラーがデフォルト設定になっているからです。
下記の写真は C4D Lに付属の【CINEWARE】と呼ばれる C4D Lと AEの連携を担うエフェクトです。もし出ない場合は、エフェクトプリセットの中にある【CINEMA 4D】の中にあります。
それからレンダリングに関する設定は、写真の 1カ所しかありませんが、設定の違いで大きく変化します。
【Viewport】
【Viewport(Draft)】
【Current(Draft)】
【Current】
4種のレンダラーの違いは、はっきりいって画質と描画に要する時間の差です。
Currentなら最高画質でエンコードできますが、恐ろしく時間が掛かります。AEでプレビューしてもぴくりとも動きません。時間を計ると、プレビュー開始まで 5秒も待たされたうえに、動き出しても 3~4秒掛かって1フレーム進む程度。フレームレートは 0.35fpsでした。
複雑な映像になるとさらに多くの待ち時間を強いらて、思わず声に出してしまいました。
「なんだーこれ。仕事にならんゾ!」とね。
しかしウダウダ文句を垂れていられませんので、とりあえずエンコードしてみました。CINEWAREの Rendererは 最高画質のCurrentで、映像は 約 40秒物。 画像サイズは HD(1920×1080)です。AEから "Ctrl+Alt+M"でメディアエンコーダにタイムラインのデータを転送して、エンコードが完了したのは……。
ぬあんと! 7時間後でした。
な……ナナ時間。なにそれです。AEでも 3Dカメラやライトを使った映像はかなり重かった記憶がありますが、それでも 1時間そこそこでした。映像サイズが大きすぎたのかもしれませんが、それにしても「なな時間!」もしもどこかに修正の必要が生じたら、また同じだけの時間が掛かります。
ぶったまげました。こりゃあかん。商売にならんと強く感じました。
そこで何とかもう少し早くならないかと、いろいろやってみて、好結果が出たのは、やはり画像サイズを小さくすることでした。1920×1080と 640×360では時間が半分以上短くなります。また、納品画質とはいえませんが、3倍の HDサイズまで拡大してもギリギリ見ることができます。そこでワタシは C4D Lでのレンダリングサイズを 640×360pxに決めました。これが『壊れた時計』の映像サイズです。
サイズを決めたところで、今度は AEで編集する方法を考えることにしました。C4D Lのファイルのままでは重くてプレビューができません。これに効果音や BGMを張り付けて編集するのは不可能です。
CINEWAREのRendererを【Current(Draft)】や【Viewport】に設定すれば、できないこともないですが、画質が悪いので気分がノリません。
そこでいろいろ悩んだ挙句、ワタシは次の方法を取って『壊れた時計』を作りあげました。
まずアニメーション全体をシーン別に分けて C4D Lで作ります。そしてシーンごとに AEへ持ち込み、Rendererを【Current】にして、メディアエンコーダーへ送ります。それから無劣化で映像にするために、非圧縮でエンコードします。
非圧縮エンコードといえば QickTimeに【非圧縮 YUV 10ビット4:2:2】と【非圧縮 RGB 8ビット】があります。どっちがいいのでしょうか。ついでに H264の 3つをならべて比較してみました。
【非圧縮 RGB 8ビット】
【非圧縮 YUV 10ビット4:2:2】
【H246 VBR2pass ターゲット3.2Mbps、最大20Mbps】
400%に拡大してやっとわかる程度ですが、同じ非圧縮でも【YUV 10ビット4:2:2】のほうが輪郭が黒ずんでいます。H246は全体にぼけた感じで、編集用としては使えませんね。
性格的に耐えうるエンコード時間は 1時間程度。するとここのマシンでは 30秒尺ぐらいの映像になります。これ以上長いと精神衛生的によくないと思い、シーン 1つの尺は 3~40秒以内としました。
シーンは 11、それをエンコードします。
できたファイルをAEのタイムラインへ順に並べて効果音やBGMを付けていきます。場所によってはトランジションやパーティクルなんかも足したりして作業します。C4D Lのデータではないので、普段どおりにとてもサクサク動きます。
運が良ければこれで完了。タイムラインの inから outまでを再度メディアエンコーダーに送って、今度は H264でエンコード、mp4ファイルに流し込みます。
なーんて、こんな簡単に済むわけがありません。
音入れをすると尺が足りなくなったり、「あ~、ライトが暗い」とかなって修正を余儀なくされます。
そこで修正を行った部分だけを非圧縮で再エンコードして、編集場所のフレームに貼り付けます。ソフトウェア業界で使われるパッチ処理ですね。ようはツギハギです。でも時間は最低限で済みます。こうしてできあがった AEのタイムラインがこれ。
映像の尺は 6分45秒。シーンは当初のままで 11個ですが、それ以上に細かく分れています。これは修正パッチがこんなにあったということです。
これ以外に、SE(効果音)が 124レイヤー、BGMの 11レイヤーが重なって、『壊れた時計』ができたのでした。
さて完成までをざっと通しましたが、順風満帆なわけがないのがこの世界です。次回は AEと似ているのに微妙に違うモノと、同じ呼び名なのにまったく別のモノを紹介します。