AE(After Effects)との連携

画像はクリックすると拡大されます。戻る   デジタル降魔録へ   次へ


どんなに C4D Lでリアルな映像を拵えようとも、R19までは AEの下(もと)でないと起動すらできませんでした。R21で単体起動ができるようになりましたが、やっぱり親方は AEなのです。C4D L単体では動画にエンコードできませんし、静止画でさえ出力できません。残念ですが、これが廉価版の宿命でどうしようもないのです。でも AEには持ち込めます。そうなったらこっちのモノ。作った映像へさらに手を加えてから mp4にすることができるのです。


 では、C4D Lのファイルを AEに取り込む方法です。

 その前にレンダリング設定とタイムラインのフレーム範囲バーを先に説明させてください。


AEに送られる映像は【このビューをレンダリング】にチェックが入っているビューで、送られるフレームは写真のタイムラインにある緑枠で囲ったフレーム範囲です。写真では 600フレームから、1088フレームまでの映像が AEへと送られますが、AEでは『0』フレームから並びます。
 そして映像の大きさはレンダリング設定の【幅】【高さ】のピクセルになります。


 レンダリング設定の【フレームレンジ】は【画像ビューワー】へレンダリングする範囲を示しており、写真では『プレビュー範囲』つまり、タイムラインの緑枠のフレーム範囲が【画像ビューワー】へレンダリングされます。


 画像ビューワーの説明も必要かと思いますので、ここでさせていただきます。



【画像ビューワーへレンダリング】
 Liteでは保存することができないのですが、製作したアニメーションやオブジェクトを正式な状態で見るためのビューワーのようです。
 起動方法はウィンドウメニューの【レンダリング】メニュー内の【レンダリングして画像ビューワーに】を押すか、ショートカットキー【Shift + R】です。

 正式なというのは、レンダリングボタンでもビュー内をレンダリングできますが、そうではなくてレンダリング設定で行った画像サイズで、完成された映像が見ることができるビューです。

 レンダリング設定の【フレームレンジ】が『現在のフレーム』の場合は再生ヘッドのあるフレーム 1枚分の状態が画像ビューワーへ送られますが、写真のように『プレビュー範囲』の場合は、タイムラインフレーム範囲(上記写真の緑枠)が画像ビューワーへ送られますので、それなりにレンダリング時間が掛かりますので注意してください。





 いよいよ大詰め。まずは AEを立ち上げます。

 AEが起動したら、新規にプロジェクトを作り、新しいコンポジションを設置します。コンポジション設定で行う画像サイズやフレームレートなどは C4D Lのレンダリング設定で行ったものと同じにします。映像の(デュレーション)もC4D Lのタイムラインよりも 少し長めに しておきます。


 さてこれから少々戸惑うことが起きるかもしれません。それは何をやるにも、とんでもなく重たくなることです。

  何キログラム?

 ではありません。パソコンが 死にます
 C4D Lではサクサク動いていたアニメーションのファイルを AEに取りこんだ途端 、パソコンが沈黙します。どれぐらい意識を失くすのかは、パソコンのスペックによります。
 ここからは、ここにあるパソコンでの結果となりますので、参考になさってください。

  Win10、64bitCPU:i7-7820X、RAM:32GB SSD:480GBで、GPUは GTX-1080です。

では、気持ちの準備ができたら、"Ctrl+I" あるいは【ファイル】→【読み込み】→【ファイル】で C4D Lのファイルを選択して読み込みます。もちろんファイルの拡張子は『c4d』です。

 その瞬間パソコンが黙り込みます。しかも "選択したアイテムを読み込んでいます『応答なし』" とメッセージを出して。
 思わず壊れた? と焦りますが、大丈夫です。これで正常なのです。

 しばらくするとパソコンが息を吹き返しますので、プロジェクトウインドウに入った C4D Lファイルをレイヤーパネルにドラッグします。
 今度も少々待たされて、ようやくコンポジションウインドウに絵が出ました。


 妙な具合です。C4D Lでレンダリングすると美しかった映像が、なぜか一部真っ黒けです。でも安心してください。これはレンダラーがデフォルト設定になっているからです。


 下記の写真は C4D Lに付属の【CINEWARE】と呼ばれる C4D Lと AEの連携を担うエフェクトです。もし出ない場合は、エフェクトプリセットの中にある【CINEMA 4D】の中にあります。
 それからレンダリングに関する設定は、写真の 1カ所しかありませんが、設定の違いで大きく変化します。

【Viewport】


一部のマテリアルが不完全で、背景も出ていません




【Viewport(Draft)】


ガイドとかいろいろな物が映っていますし、背景もまだダメです




【Current(Draft)】


背景もマテリアルもよくなりましたが、スペキュラ(光の反射)が全く出てません




【Current】


完璧です。でもこの画像が出るのに 5秒ほど待たされます


4種のレンダラーの違いは、はっきりいって画質と描画に要する時間の差です。

 Currentなら最高画質でエンコードできますが、恐ろしく時間が掛かります。AEでプレビューしてもぴくりとも動きません。時間を計ると、プレビュー開始まで 5秒も待たされたうえに、動き出しても 3~4秒掛かって1フレーム進む程度。フレームレートは 0.35fpsでした。
 複雑な映像になるとさらに多くの待ち時間を強いらて、思わず声に出してしまいました。

「なんだーこれ。仕事にならんゾ!」とね。

 しかしウダウダ文句を垂れていられませんので、とりあえずエンコードしてみました。CINEWAREの Rendererは 最高画質のCurrentで、映像は 約 40秒物。 画像サイズは HD(1920×1080)です。AEから "Ctrl+Alt+M"でメディアエンコーダにタイムラインのデータを転送して、エンコードが完了したのは……。

 ぬあんと! 7時間後でした。

 な……ナナ時間。なにそれです。AEでも 3Dカメラやライトを使った映像はかなり重かった記憶がありますが、それでも 1時間そこそこでした。映像サイズが大きすぎたのかもしれませんが、それにしても「なな時間!」もしもどこかに修正の必要が生じたら、また同じだけの時間が掛かります。

 ぶったまげました。こりゃあかん。商売にならんと強く感じました。


 そこで何とかもう少し早くならないかと、いろいろやってみて、好結果が出たのは、やはり画像サイズを小さくすることでした。1920×1080と 640×360では時間が半分以上短くなります。また、納品画質とはいえませんが、3倍の HDサイズまで拡大してもギリギリ見ることができます。そこでワタシは C4D Lでのレンダリングサイズを 640×360pxに決めました。これが『壊れた時計』の映像サイズです。


 サイズを決めたところで、今度は AEで編集する方法を考えることにしました。C4D Lのファイルのままでは重くてプレビューができません。これに効果音や BGMを張り付けて編集するのは不可能です。
 CINEWAREのRendererを【Current(Draft)】や【Viewport】に設定すれば、できないこともないですが、画質が悪いので気分がノリません。
 そこでいろいろ悩んだ挙句、ワタシは次の方法を取って『壊れた時計』を作りあげました。

 まずアニメーション全体をシーン別に分けて C4D Lで作ります。そしてシーンごとに AEへ持ち込み、Rendererを【Current】にして、メディアエンコーダーへ送ります。それから無劣化で映像にするために、非圧縮でエンコードします。

 非圧縮エンコードといえば QickTimeに【非圧縮 YUV 10ビット4:2:2】と【非圧縮 RGB 8ビット】があります。どっちがいいのでしょうか。ついでに H264の 3つをならべて比較してみました。

【非圧縮 RGB 8ビット】



【非圧縮 YUV 10ビット4:2:2】



【H246 VBR2pass ターゲット3.2Mbps、最大20Mbps】




400%に拡大してやっとわかる程度ですが、同じ非圧縮でも【YUV 10ビット4:2:2】のほうが輪郭が黒ずんでいます。H246は全体にぼけた感じで、編集用としては使えませんね。

 性格的に耐えうるエンコード時間は 1時間程度。するとここのマシンでは 30秒尺ぐらいの映像になります。これ以上長いと精神衛生的によくないと思い、シーン 1つの尺は 3~40秒以内としました。


 シーンは 11、それをエンコードします。
 できたファイルをAEのタイムラインへ順に並べて効果音やBGMを付けていきます。場所によってはトランジションやパーティクルなんかも足したりして作業します。C4D Lのデータではないので、普段どおりにとてもサクサク動きます。

 運が良ければこれで完了。タイムラインの inから outまでを再度メディアエンコーダーに送って、今度は H264でエンコード、mp4ファイルに流し込みます。

 なーんて、こんな簡単に済むわけがありません。
 音入れをすると尺が足りなくなったり、「あ~、ライトが暗い」とかなって修正を余儀なくされます。

 そこで修正を行った部分だけを非圧縮で再エンコードして、編集場所のフレームに貼り付けます。ソフトウェア業界で使われるパッチ処理ですね。ようはツギハギです。でも時間は最低限で済みます。こうしてできあがった AEのタイムラインがこれ。


AEのタイムラインはこんな状態

映像の尺は 6分45秒。シーンは当初のままで 11個ですが、それ以上に細かく分れています。これは修正パッチがこんなにあったということです。
 これ以外に、SE(効果音)が 124レイヤー、BGMの 11レイヤーが重なって、『壊れた時計』ができたのでした。


 さて完成までをざっと通しましたが、順風満帆なわけがないのがこの世界です。次回は AEと似ているのに微妙に違うモノと、同じ呼び名なのにまったく別のモノを紹介します。



【8】AEとの連携  これにて ドロンさせていただきます

戻る   デジタル降魔録へ   次へ