【17】太陽系を作る

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AE(After Effects)に付属の C4d L(CINEMA 4D)をなんとかものにしようと悪戦苦闘する日々を続けて、まもなく 1年半が過ぎようとしております。それでもまだ先が見えてこないと思えるのは、C4d Lが扱う 3Dがいかに奥深いか、ではないでしょうか。しかも C4d Lの "L" は"LITE"の略、廉価版です。つまり本物の縮小、乱暴な言葉で表せば、 AEのオマケ なのです。にもかかわらず、その廉価版を 1年半も使ってきてまだ謎の部分が大半を占めるなんて、これが正規版になったらもうそれはワタシの中の宇宙です。無限大の興味が転がっているのです。

「おおぉ。そうか。ならば宇宙を作ろう」
 ということで。今回はC4d Lで 宇宙を作ってみます


 テーマが壮大すぎてどこから手を出したらいいのか皆目わかりません。かといって、想像だけで適当なものを作っていたらそれこそ 3D遣いだと 名乗る ことはできません。

 なんでもそうですが、大きさを把握しておかないと正しい物は作れません。とくに 3Dは数字入力が基本です。感覚だけで立体物が作れないのは AEで 4面ビューを使わずに作ったときに痛感しました。基本は 4面ビューから、そしてたとえ宇宙であってしても、ある程度はつじつまの合った正しい数値が必要なのです。


 などと大それた能書きを垂れていたらビビってきました。いきなり大宇宙に手を出すのは時期尚早なので、身近なところから太陽系、それももう少し規模を落として、内惑星を作ってみます。題して、『箱庭太陽系(内惑星編)』です。

 まずは内惑星のデータを調べました。
 内惑星とは、地球より太陽に近いほうの惑星たちです。水星と金星があります。初めですのでこれぐらいから雰囲気をつかんでおいて、一気に太陽系全体に広げれば何とかなるでしょう……。
 後々、この考えが相当甘かったことを知らされるのですが、それはこの先で……。


 太陽と地球の距離を調べると……、1億 4959万 7871 キロメートル。
 しばらく無言で数字を睨んでしまいました。C4d Lの単位に『キロメートル』はありましたが、こんなでっかい数字は無理でしょう。仕方がありませんので、タイトルのとおりに大きさをオモチャサイズにしてみます。キリがいいので10億分の1 にしてみます。すると約 149.6メートルとなりました。
 この要領で全部計算するつもりでしたが、すでに皆さんやっているようでデータはネット上に転がっていました。これで少し時間が省略できます。ありがとうございます。

 それによると。
 太陽は 1.4メートルの球体
 水星はそこから 57.9メートル離れた直径 0.58センチの球。
 金星は 108.2メートル離れた直径 1.21センチの球。
 地球は 149.6メートル離れた直径 1.28センチの球。
 月は地球から 38.4センチ離れた直径 0.35センチの球。
 今回は自転を考えないとしても公転は必要です。静止画を作る気はありません、あくまでもアニメーションです。


 すると……。

 地球は 1年で太陽をぐるっと回るので 1日あたり 0.98°で、金星は 1.6°、水星は 4.1°太陽の周囲を回り、月は地球の周りを 27.3日掛けて 1周するので 1日では 13.2°。
 なんか小数点以下の数字がどうでもよくなってきましたが、せめてこれぐらいは正しくないと C4d Lに失礼です。

 で配置してみました。

「み……見えん」
 太陽は中心で光り輝いていますので存在感はあります。さすがです。でもその他の惑星が皆目目視できませんでした。公転軌道のスプラインを追加してみたのがこの写真。


軌道面が歪んで見えるのはそれぞれわずかに傾いているからです。そこもちゃんと再現しています。


 軌道ラインは見えますが、肝心の惑星たちが見えません。ディスプレイの埃を払って目を凝らして、かろうじて太陽に近いほうの金星がゴミみたいな点になって見えますが、あとは見えませんでした。


 カメラをグーンとズームさせればこのとおり、地球と月が見えますが……。



あらめて宇宙の広さを実感させられたって……。なんか変ですかね。

 しかたがないので考えを改めます。全体俯瞰の『箱庭太陽系』はあきらめて、金星から地球を見たら……に変更です。これだって結構興味をそそられます。なにしろ実際に金星近くまで行かないと見ることができないのですから、想像するだけでワクワクします。

 ところがこの方向転換も失敗に終わりました。カメラを金星の背後に回して地球を見てみたのですが、まだ地球がよく見えないのです。完璧に夜空の点でした。


黒っぽい金星の上、太陽の右横にあるゴミみたいな点が地球です



 でもあらためて気づかされました。地球から実物の金星を肉眼で見れば同じように夜空の点です。ということはこの映像はリアルに再現されているわけでいいのでしょうか。

 でもアニメーションにするにはもうちょい大きく見えないと、ミジンコの回遊を見ているみたいでいまいち感動できません。そこで最後の手段はこれです。比率を変えます。
 太陽の大きさと太陽からの距離はそのままにして、惑星だけの比率を50倍にしてやっと何とかなりました。ついでに金星の分厚い大気も表現してみたのが次の写真です。


ここまでしてやっと地球と月が見えてきました。宇宙って本当に広いんです。

これを見て自分の考えの浅さに肩を落としました。リアルに金星の大気を表現してみたのですが、カメラを地表に近づけるとカメラの前にモヤが掛かって肝心の地球が見なくなります。これも当然のことで理にかなっているのですが、金星から地球を見たらというテーマがまたまた暗礁に乗り上げてしまったのです。よく考えたら金星の地表は分厚い大気の底に沈んでいたのでした。だから望遠鏡で見ても白く光るだけです。金星の地表から空を見上げても同じことです。晴れることのない金星では星空を見ることができません。


 みたびシナリオ変更です。こうなったらなんでもありです。

 新タイトル。
『もしも大気のない金星から30日間地球を見続けたらどう見えるのか?』

 なんだか適当な理由をつけてテーマを変えていく気がしますが、実際にはありえないことを再現するのも C4d Lを 使う意義の一つ ではないでしょうか。



 金星から大気を消し去って、先ほど作った失敗作の『箱庭太陽系(内惑星編)』を30日計算にしなおしです。1日を35フレームにして、1050フレームの期間に各惑星が軌道をどこまで進むかを再計算してアニメーション化しておきます。 水星と月の公転、あわせて地球の自転も再現してみます。

 軌道計算が終わったら、大気を追い出した金星の地表を何とかしたいです。ツルツルの茹で卵みたいでは味気ありません。できたら地球や月の表面もできる限りリアルにしたいし、太陽だって白一色ではなくてもっと勇ましく悠然と燃えかまえて欲しいです。


 それでは太陽から作っていきましょう。

 太陽は水素の核融合反応で高熱の光を放っていますが、C4d Lには 核融合システムはありません ので、少々アレンジしてテクスチャの【炎】を使ってみましょう。このテクスチャはアニメーションしてくれますので、熱くうごめく太陽のイメージにピッタリです。

 新規マテリアルを作って、発光チャンネルにテクスチャの【炎】を適用。それを OMにある『太陽』にドラッグして【マテリアルタグ】を貼り付けます。
 続いて【マテリアルタグ】が示す【タグ】→【投影法】を『球』にします。次はマテリアル位置の調整です。縦に並んだアイコンから【テクスチャモード】をオンにして、エディタビューの 3D軸を上下左右に動かして炎の吹き出し具合を調整します。


【炎】を適用しただけでは消し炭みたいです

とまあ……。
 この説明だけで理解できた人は普段からやっている方だと思います。ワタシもいまなら、ああ、なるほどねってなりますが、1年前なら何を書いてあるのか理解不能、犬が星を眺めるようです。

 今の説明はその状態に持っていくまでの道筋をものすごく省略しているのです。実際は恐ろしいほどの工程があって設定や調整方法を文章に書き下ろせません。ワタシもそうでしたが、この複雑さが 3Dに挫折する原因はないでしょうか。本を読んだだけでは理解できないし、理解できたとしても二週間も過ぎれば忘れます。思い出すためには、よほどうまく文章に直してメモをとるしか方法がないのです。そして暇さえあればそのメモをまとめていくのが正解かもしれません。現にこのサイトはその延長の一つで、こうやって調べたことをまとめているにすぎません。

 話がそれました。
 ひとまずそれらもろもろを箇条書きにしますので、このサイトで書き綴ってきた説明と照らし合わせてご利用ください。

・最初に太陽となる球体プリミティブを作ります。
・半径を10億分の1 にします。本物の直径は 139万2000キロメートルなので、半径を696ミリメートルにします。
・新規マテリアルを作って、太陽の表面と コロナ 部分を作ります。
インタラクティブレンダーで太陽が常にレンダリングされるようにします。でないと適用結果が全く反映されません。
 まずは表面。
・【発光】チャンネルのテクスチャにサーフェースの【炎】を選択します。
・【炎】のシェーダー【横方向】を『0.62』
・【縦方向】を『0.4』
・【周波数】を『0.2』これは炎がうねる速さになります。
・【タービュランス】を適当な『1.3』に。これは炎の赤黒い部分の調整です。
・マテリアルエディタの【ビューポート】で、【アニメーションプレビュー】にチェックを入れて、映像再生時に【炎】が動くようにします。

 ここまでで太陽の表面です。こんな感じになりました。


エディビューの 3D軸は【テクスチャモード】です。それがかなり上にあるところを注目してください。

作業は続きます。今度はほとばしるコロナを作ります。
・【グロー】チャンネルを加えて、コロナぽく光が放出するイメージを作ります。
・【グロー】の【内側強度】を『6%』
・【グロー】の【外側強度】を『300%』
・【グロー】の【半径】を『800mm』
・【グロー】の【ばらつき】を『0%』
・【グロー】の【周波数】を『0』
・【グロー】の【マテリアルの色を使用】にチェック
 これでなんとなく太陽ぽいものができ上がりますが、太陽の大きさによっては先ほどのパラメータはすべて再調整を要しますので大きさは慎重に。


グローを調整した太陽のコロナです。

少々赤っぽいですがこの後に太陽から放たれる猛烈な光の放射、光彩を作りますので、それと合わせて調整します。

 その前に補足です。
 光彩を飾る光の細いラインですが、いろいろと試行錯誤したのですが C4d Lでは作れませんでした。やはりこういうものは、それを得意とする AEにまかせたほうがベストだと思います。道具は使い分けてこそ真価が発揮できるというもの。C4dの正規版をお使いの方でも、これと同じ方法を取っているのではないでしょうか。


 さて光彩です。
 これはいつもの『全方向ライト』に【可視照明】のオプション『可視光線』を加えて作りました。

・新しい『全方向ライト』を作って太陽の中心に置きます OMには『太陽光彩』と名前を付けました。
・太陽光彩の属性マネージャ、【一般】→【可視照明】を『可視光線』にします。下記写真のピンク枠。


この時点ではまだ太陽の中心に埋もれていてコロナの赤っぽい光りしか見えていません。これから大きさや強さを調整します。

・太陽光彩の属性マネージャ、【可視照明】の欄に移動して、【外側の大きさ】を『4000mm』に。激烈に光りますので、
・太陽光彩の属性マネージャ、【一般】→【強度】を『8%』まで落とします。
・再び【可視照明】の欄に戻って、【明るさ】を調整して太陽っぽい感じに。ワタシは『450%』にしました。


エディタビューの中ではまだ猛烈に光っていますが、これでも金星や地球を照らすには至りません。まじで距離があるんです。そこで光りの源を作ります。

・太陽を中心にして上下、左右、前後に同じ距離だけ離した位置、今回は【10000 mm】にして『全方向ライト』を 6個配置します。
・すべてのライトの【強度】を『120%』にします。影の設定は無しです。

 これを金星に置いたカメラで見てみると、


真ん中あたりに青い地球と月が見えていますが、実際この場所から見たことがありませんが、たぶんこんなイメージなのでしょう。

 それではこれを一度 AEに転送してみます。C4d Lで見た場合といく分変化しますので念のために確認です。C4d Lでレンダリングとエンコードができたらこんなことはしなくてもいいのですが、最終段階は AEまかせなのは廉価版の宿命ですので、ここは諦めましょう。


案の定、AEでみると太陽の周りの淡い光のリングが消えてしまいましたが、ここまで光ってくれたら後は AEの効果に期待して、太陽はこれで終わりです。

 次に金星の地表を作ります。

 テクスチャのサーフェイスに【金星】というのがあるので試してみました。


ネットで実物の写真を見ましたが、大きく外れていませんでした。二酸化炭素の分厚い大気が太陽光をよく反射する明るい惑星だそうです。よくできているのですが、今回はその地表を作るわけでして、完璧に想像だけの世界です。しいて言えば、木星のように全体が気体でおおわれておらず、固い地面があるらしいので作りやすそうです。早速作業にかかります。

・金星として作った球体の表面にできる限りカメラを近づけます。
・プリミティブオブジェクトの中にある【地形】をカメラの前に置きます。
・【地形】の属性マネージャにある【オブジェクト】欄を出して、【サイズ】を金星とだいたい同じにします。
・同じ【オブジェクト】欄にある、【球状】にチェックを入れて球形にしてから、もとからある金星と同じ位置に配置します。
・後はひたすら自分のイメージに近づけるために【幅方向の分割数】【荒い造作】【細かい造作】【スケール】【海面の高さ】【台地の高さ】【シード】などのパラメーターをいじくり倒します。
・カメラ位置の調整と【地形】の位置を動かして自分のイメージに近づけていきます。
・だいたい整ったら、もとからある金星は捨ててもいいのですが、全体俯瞰のときに使用する予定ですので、属性マネージャ、【一般】にある【エディタでの表示】を『隠す』に、【レンダリングでの表示】も『隠す』にしてカメラから見えなくします。


上記の設定でこんな地形ができました。上の写真はカメラの後ろから見た楽屋裏になります。映画のセットだと思ってください。
 でもこのカメラで見るとこうなります。


宇宙には行ったことがありませんが、大気のない金星ならこんな感じでいいかもしれません。

 金星から見た場合、太陽以外の惑星の表面は見えませんが、この後『箱庭太陽系(内惑星編)』に再挑戦したいので、地球と月と水星の表面を作りました。
 何かの参考にどうぞ。

 水星の半径は『2.46』ミリメートル。月は『1.73』ミリメートルになりますが、カメラに映らないほど小さいので、このテーマの時だけ惑星は 50倍します。なので、水星は『12.3』センチ、月は『8.65』センチ。これでも箱庭太陽系たる大きさです。

 この二つは金星に使ったの同じ【地形】プリミティブを元からある球体プリミティブに重ねて、たくさんの設定値を調整して作りました。地形の表面には【バンプ】のテクスチャにサーフェイスの【錆】を施してデコボコ感を作りました。月も水星も実写を見てそれに近づけましたが、C4d L備え付けのテクスチャでは同じようにはいきませんでした。とくに月はおなじみの衛星ですので、違和感が半端ないですが、まあ薄眼で見ればそんな感じに見えるか……でお許しください。




 地球も計算値の 50倍、『32.5』センチの球体を作り、それに【カラー】チャンネルのテクスチャから【サーフェース】→【地球】を貼り付けました。ずばり【地球】となっていますが、実物の大陸が作られるわけではありません。海とか山の色を調整した後に青いグローを出して大気の層を作って、なんちゃって地球にします。正式につなぎ目の無いシームレスな地球の実画像を使えば完璧でしょうが、ここでは C4d Lに装備されたモノだけで作るのがテーマですので、これでヨシとしました。


大陸は実物と大きく異なりますが、実にそれっぽいです。



 最後に AEへ転送してから、QuickTimeの非圧縮モードでレンダリングします。そしてできた movファイルを AEの新しいプロジェクトにインポートします。ここでテキストを入れたり、日数の変化を AEのスライダーエフェクトで追加。そして太陽の光彩が大きく広がるようにエフェクトをかけて完成したのがこの動画です。


【もしも大気のない金星から30日間地球を見続けたらどう見えるのか?】

動画が重くて見られない方は、低解像度ですがユーチューブで閲覧できます。
https://youtu.be/xYpNvr-ktFA


動画となって初めて太陽の【炎】テクスチャのアニメーションが少し早いことに気づきましたので、【炎】のシェーダー【周波数】を『0.02』に変更してあります。
光彩はいまいち出ませんでしたが、フルスクリーンにすると地球が自転しているのが見えます。ちゃんと 1日に 1回転してるのが可愛らしいです。


 これで内惑星の配置が終わりました。後はカメラアングル変えるだけで、どこからでも太陽系を眺めることができます。ただし正式に 10憶分の1 にすると全体俯瞰のときに惑星が見えません。4K、8K画像なら可能なのかもしれませんが、素人にはこれが精いっぱい。そのあたりは集金制度の放送局さんにお任せして、こちらは『箱庭的』太陽系で収めておきます。


【箱庭太陽系(内惑星編)】

動画が重くて見られない方は、低解像度ですがユーチューブでご覧ください。
https://youtu.be/4DloQkExxsY

 これを延長して海王星まで続ければ、ひとまず完成でしょう。



【17】太陽系を作る  終わりです

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