カメラを滑らかに走らせる

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前回に続いて今回もカメラワークです。異なるのはカメラを道に沿って滑らかに走らせる方法です。
 これまで以上にスプラインパスが重要になってきますので、復習の意味も込めましてもっと深く勉強してみました。初めてスプラインパスを打つ方も参考になさってください。

 今回の要点は、次のとおりです。

<1> スプラインパスの打ち方
<2> スプラインパスに沿ってカメラを走らせる方法
<3> さらにスプラインパスを滑らかにしてカメラのブレを極力抑える方法



 AEで作るコンテンツでも地図に沿って矢印が延びていくなどという映像はよく求められます。C4d Lでも同じことができますが、こちらは 3D映像ですので、真上から見た地図に沿って走らせるだけでなく、地面近くにカメラを下して地図に沿って走らせると、さらに面白い映像になります。

 とにかく作ってみましよう。
 まず道路を作ります。作り方はこれまでやってきたことの繰り返しです。



 上の写真のように、道路のカタチをスプラインペンで描いていきます。角ばった道路は見栄えが悪いので滑らかにします。それとスプラインで作る道路は、後で『押し出し』ジェネレーターで立体にしますので、始点と終点がつながった閉じたパスにする必要があります。

 カメラを走らせる経路になるスプラインパスも、滑らかさを要求されますので練習のつもりでやってみてください。

<1> スプラインパスの打ち方


 C4d Lではスプラインパスを打つためのツールが複雑に分かれています。単純に選択ツールからペンツールに切り替えるだけではありませんので、Adobe系から移ってきた方は戸惑うかと思います。スプラインオブジェクトを扱うときと、メッシュオブジェクト(プリミティブオブジェクト)を扱うときで選択ツールの挙動が大きく変わりますから、次の写真を参考にしてください。



 オブジェクトの移動や設置で使用してきたのは、③の【長方形選択】ツールだと思います。デフォルトは【ブラシ選択】ですが、Adobe系に慣れた人はどうも【ブラシ選択】ツールは使いづらくて、AEや Aiでおなじみの【長方形選択】ツールをつい選んでしまいます。選択ボタンを長押しすると切り替えることができます。

 では始めます。
 スプラインパスを新規に打ったり、パスを選択する場合は、②の【モデルモード】から ①【ポイントモード】に切り替えるのが必須です。モデルモードのままではスプラインのパスポイントは打ったり、選択したりできません。

 また、スプラインの修正時につい忘れがちなのは、⑥の OMにあるスプラインオブジェクトを選択することです。ここが選択されていなければ、やはりパスポイントは選択できません。ややこしいのでまとめますと、

 メッシュオブジェクトを扱うときは、②【モデルモード】になっていること。移動は選択して 3Dギズモ(3Dカーソル)で可能。④【移動ツール】にする必要はありません。

 スプラインオブジェクトを扱うときは、①【ポイントモード】になっていること。⑥のOMにあるスプラインオブジェクトが選択されていること。そしてパスの選択は③【長方形選択】でも④【移動ツール】でも可能ですが、ベジェパスのハンドルを調整するときは④【移動ツール】か、⑤【スプラインペン】で行います。


 それでは道路作りを始めましょう。
 滑らかな曲線を作るには、パスポイントを打って、そのままマウスをドラッグしてベジェ曲線に変えつつ作っていく方法と、角ばった直線でだいたいの形を作ってから、要所要所のパスポイントを曲線に変えていく方法があります。このあたりは、AEや Aiとさほど変わりはありませんが、今回のように平面に対して水平に走るパスのベジェハンドルを修正するときは、透視(俯瞰)ビューで作業しないでください。透視ビューでハンドルを動かすと 高さ方向にも曲がることがあり、上下に歪んだパスになりますので注意してください。

 この挙動は縦と横の世界を表現する 2次元アプリの Aiではあり得ないことなので、最初のうちは面喰っていましたが、修正方法や回避策を習得するとなんでもないことですので安心してください。歪みを見極める方法も後述していますのでそちらをご覧ください。


 角ばったパスポイントをベジェ曲線に変更するときは、①【ポイントモード】になっているか、④【移動ツール】、あるいは ⑤【スプラインペン】になっていることを確認してからパスポイントを選択、そしてポイントから少し離れた位置でビューを右クリックします。出たメニューの⑦【ソフト補間】を選ぶと、ベジェパスに切り替わります。このポイントから少し離れた位置でビューを右クリックというのが曲者で、ポイントの上で右クリックすると別のメニューが出てしまいます。

【ソフト補間】にすると、ある程度自動的に滑らかな曲線にしてくれますので、調整が必要ない場合もありますが、調整するときは、④【移動ツール】か ⑤【スプラインペン】に切り替えて、ベジェ曲線のハンドルを操作します。④【長方形選択】のままではハンドルをドラッグできませんので注意してください。




 うまく曲線にならないと感じたときは、一度【ハード補間】に戻してから再度【ソフト補間】にすると意外と滑らかな曲線に自動調整してくれる場合がありますので、試してみても損はありません。



【閉じたスプラインパスが歪んでいるか調べる方法】

パスポイントを全部選択して【座標マネージャ】の Yサイズ(高さ)が『0』にっていることを確認します。もし『0』以外の数値が入っているときはどこかで歪んだものができあがりますので、真っ平らにします。方法は【スプラインペン】で歪まない真っ平な平面を作りたいを参照ください。


 問題無ければジェネレーターの【押し出し】で適当な厚みを付けます。下の写真がその状態です。



『地面』も適当な平面を作って拡げてあります。これが無いと AEに持ち込んだときに宙に浮いた状態になります。環境オブジェクトの地面を使っても問題ありません。
 道路ができたらこれも適当なアスファルトぽい色見のマテリアルを貼って完了とします。


<2> スプラインパスに沿ってカメラを走らせる方法


 次にカメラを設置します。場所は道路の付近でかまいません。最終的にカメラを走らせるスプライン(実物の撮影機材ではカメラレールと呼ばれています)とリンクしますので、どこに置いても同じです。


 次の写真がカメラをセットしたときの OMの状態です。


OMの最上位に『カメラ・コンパス』というヌルがあって、その下層にまた『カメラ・コンパス・ダミーKF』という名前のヌルを置き、さらにその下層にカメラオブジェクトが設置されています。

 カメラと同層に『comp KFH』という名のヌルの中にいろいろとオブジェクトが入っていますが、これはカメラがどちらを向いているかを示したくて作った方角を示すコンパスのオブジェクトを入れています。透視ビュー(俯瞰ビュー)にも映っていますが、東西南北を示す赤い針がそれです。今回の題材には必要ないものですので、無視してください。
 という経緯ですので、地図(上面ビューがそれになります)の真上を北としています。


 つぎにカメラレールとなる、カメラが走る道筋をスプラインで描いていきます。道路の真ん中を滑らかに走るように描くのがポイントです。角ばったコーナーは厳禁です。カメラを走らせると、その部分で映像が大きく揺れますので、道路を作ったときよりもさらに丁寧な調整をしてベジェ曲線を描いていきます。


 補足ですが、
 今回はカメラレールがどんな曲線を描いているかを視認できるように作りましたので、スプラインで描いたパスを立体物にしました。しかし、実際にはこの作業は必要ありません。

 ということで OMには『ルートパス』と名前をつけたジェネレータの【スイープ】が置かれ、その下層に円形パスとカメラが走る『ルート』と名付けたスプラインを設置して長い土管のようなものを拵えています。【スイープ】については【ジェネレータの【スイープ】って?】をお読みください。


 描けたら、『スプラインに沿う』タグを貼ります。それが次の写真です。



 カメラが収まった最上位層となる『カメラ・コンパス』にタグが貼られています。これが『スプラインに沿う』を処理するタグです


 貼り付け方は次の写真で。



① タグを貼りたいオブジェクトを右クリックします
カメラをレールに沿わせるのですが、その最も上のヌル『カメラ・コンパス』をスプラインに沿わせます。
② 右クリックメニューから『アニメーションタグ』を選択します
③『スプラインに沿う』を選択します







 続いてタグの設定をします。



① タグをクリックします
②【パススプライン】の項目に沿わせる先のスプラインパスを指定します。
 キーボードから OMで付けた名前『ルート』を入力するか、右のスポイトをクリックしてから OMに置いたカメラレールとなるスプラインをクリックすると自動的に名前が入力されます。スプラインを相手にしますので、『スイープ』や『円形』を選択しても意味ありません。
③ 【接線方向を向く】にチェックを入れます。
 チェックを入れないと、カメラはあっちを向いたままスプライン上を走っていきます。


 これで、カメラが入った最も上のヌル『カメラ・コンパス』がスプラインパスに沿って動きます。

 ところで、何層にも親ヌルを重ねる理由ですが、これはスプラインに沿わせる部分とカメラの向きを自由に操りたいがための処置です。こうすると処理をそれぞれの部分で分担できます。もし、カメラに直接『スプラインに沿う』タグを貼るとカメラはもう自由が利きません。ひたすら前を向いて、突っ走るだけになってしまいます。後からカメラの位置をもう少し上げたくなったり、視点を変えたくなることなど日常茶飯事です。こんなときのために、カメラの動きと連動した別のヌルオブジェクトを利用します。他にもジンバルロック現象が起きて、回転不能な状態に陥った場合の保険みたいなモノとして、親ヌルを何層にも重ねています。



 次に『スプラインに沿う』タグにキーフレームを打ちます。



 再生ヘッドをドープシート(以降タイムラインと書きます)の 10フレームに移動してから、OMにある『スプラインに沿う』タグを選択すると、属性マネージャが【タグ】に切り換わりますので、【スプライン上の位置】の数値を『0』%にしてから、左端の【◇】アイコンを押します。

 これでタイムラインにキーフレームが打たれて、赤色の【◆】に変わります(写真の赤丸部分)。
 この赤色のときが再生ヘッドがキーフレームの位置にある時を示していますので、覚えておいてください。タイムラインがキーフレームから外れると、赤色から『オレンジの縁取り』に変わります。また、キーフレームが何も打たれていないときは、白い【◇】アイコンになっています。

 同じ要領で、再生ヘッドを 2150あたりまで移動させてから、【スプライン上の位置】の数値を『100』%にして、オレンジ縁取り【◇】アイコンを押して赤になるのを確認してください。なれば、2150フレーム目に『100』%のキーフレームが打たれています。

 10フレーム目や、2150フレーム目を選んだのに深い意味はありません。0フレーム目にするとキーフレームが選択しにくいというのと、この映像は秒間 30フレームに設定していますので、だいたい 72秒後にカメラが道の端に達する値です。結構長くてくねくねしていますので、あまり短い時間で走らせると目が回わる、ただそれだけの理由です。

 これで動きますので、一度プレビューしてカメラから見た映像を流してみます。

 まずレンダリングするビューを決めます。



① 透視ビュー(俯瞰ビュー)の【ビュー】をクリックして【このビューをレンダリング】にチェックを入れます。



 次にカメラをデフォルトカメラから、設置したカメラに切り替えます。


この写真ではまだデフォルトカメラが選択されていますので、透視ビュー(俯瞰ビュー)の緑矢印の部分が『デフォルトカメラ』になっています。

 そこで、
② ビューメニューの【カメラ】をクリックして、【使用カメラ】を開いて、【カメラ】にチェックを入れます。



 チェックが入った途端……。


スプラインパスに沿わせて走るカメラの映像に切り換わります。透視ビュー(俯瞰ビュー)の緑矢印の部分が『カメラ』になりました。



 これで一度走らせてみます。ファンクションキーの『F1』を押してエディタビューを透視ビュー(俯瞰ビュー)に切り替えてから、タイムラインにある再生バーをフレーム『0』に移動させます。できたらタイムライン上にある再生コントローラの『▷』再生ボタンを押すか、ファンクションキーの『F8』を押すと動き出します。

ひとまずスプラインに沿ってカメラが移動していますが、スプラインパスはベジェ曲線にしたのに、ガタガタになっています。これだと見た目が悪いのと、カーブを曲がるごとにカメラが微妙に揺れています。上の映像では地面と道路以外何もないのでその揺れが目立ちませんので、次の映像のように簡易的に作った建物を並べてみるとよく見えてきます。

このように、カメラが揺れると映っている建物のブレが目立ちます。



<3> さらにスプラインパスを滑らかにしてカメラのブレを極力抑える方法

ベジェ曲線は滑らかになっているのに、オブジェクト化したレールが角ばっている原因は分割数が足りないからです。スプラインの分割数を上げると滑らかなオブジェクトになります。その代わり CPUに対する負荷が増えることを覚えておいておください。

 分割数を上げます。
『ルート』という名前のスプラインオブジェを OMで選択すると属性マネジャーが写真のように変わります。



【補間法】が『最適』で、分割角度が『5°』となっているのがデフォルトです。いろいろ試したのですが、もっとも効果があった設定は、【補間法】を『均等』にして、【分割数】を上げていく方法です。



上は、【分割数】を『16』にしました。だいぶ滑らかですが、まだ角ばった部分が見えます。




『128』にするとほぼ曲線になりました。

 それではこの状態でプレビューしてみます。

その部分を見せる

CPUの負荷が増えて少々プレビュー速度が遅くなりましたが、かなり滑らかになっています。しかしある場所で引っかかったような動きになるところがあります。信号機と青いビルを越えてから急峻に右へ曲がり、オレンジのビルを左に曲がった先、樹木が見えてきた左カーブの途中あたりで、一瞬カメラが揺れます。



 コマ送りで見てみると、コーナーの終わりと次のコーナーまでのあいだです。下記の写真にある黄色矢印で示したポイントが原因のようです。



 さらに真上から見たビューだけにしてみます。


目視では角ばっているようには見えませんが、確かにここでカメラが少しブレています。
 このような微妙な調整は手動でやる前に、いったん『ハード補間』に戻してから、再度『ソフト補間』にして自動調整をしたほうがうまくいくことがあります。

 一度『ハード補間』に戻してからもう一度『ソフト補間』にしたのがこれ。


変化したのか、よくわかりませんので二つの写真を重ねてみます。



どっちがどっちなのか区別がつきませんが、確かに変化してます。

早速この部分をプレビューしてみます。

動きがずいぶん滑らかになりました。自動補正でも意外とうまくいくこともありますので、積極的に試してみてください。




 最後に正式にレンダリングした映像をどうぞ。まだ調整の余地はありますが、何もしないときよりも格段と滑らかになっています。

いろいろなシーンで使ってきたガラクタのような建物を適当に並べてみました。少々狭苦しい街並みはまるで遊園地みたいですが、面白い映像になりました。












【3年間を振り返って】


 初めて 3Dが重要であると気づいたのは、Flash MXを使っていたときでした。2002年のころです。それ以来、何度も挑戦するのですが、すべて挫折で終わっています。なぜこんなにわずらわしいことをしなければ立体映像が作れないのか、2D映像のやさしさと比べて苛立ちさえも覚えていました。でもいつのころかその苛立ちの原因が 3Dに関する知識があまりに薄っぺらだったことに気づき、これは一朝一夕ではなしえるものではないと悟ったのかもしれません。急激に弛緩してかつ強く思いました。今度で最後にする、と。
 それなら何から手を出すか。よく見ると、とてもいい教材が手元にあったのです。AEや C4d Lですね。おかげでふと頭が軽くなったのを覚えています。時間はかかってもコツコツやっていこうと思い立ったのが 3年前でした。

 まどろっこしい 4面ビューが最も重要だと気づかされ、回転の呪縛では、回転ツールを使ったときと、回転軸の数値を変えて回転させたときとでは結果が異なるということに気づき、回転するアニメーションに起きるジンバルロック現象を理解したあたりから急激に目の前が開けた気がします。
 よく意味の分からなかったマテリアルやテクスチャ、そして投影法。このときも、なんでこんな方法でしかマテリアルを表面に貼れないんだろうと感じたのを覚えています。しかし投影法の『平行』の使い方をマスターできたときには、ほかの投影法の意味も理解していました。一つが解けると次々とパズルが解けていく気分で爽快です。

 次は正規版の C4dにグレードアップです。さらなるスキルアップを誓って、この世界が尽きるまで歩き続けたいと思います。





 カメラを滑らかに走らせる編  おしまい

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