【20】PCBを作る

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今回は PCBを作ります。
 PCBといっても産業廃棄物として騒がれた化学物質ではなく、PCB(printed circuit board) と呼ばれるプリント基板に電子部品が取り付けられた物を C4d Lで作ってみます。

 最近はプリント基板を見る機会も多くなってきて、知らない人は少ないと思いますが、あれはただの緑色(橙とか黒とか白もあります)の板ではありません。表や裏には美しい模様のような線が引かれています。その表面には電子部品が整然と置かれて、一種独特の美しい空間を作っており、デザインの一つして見られることもあるようです。


専門的な話になりますが、プリント基板に現れる模様のようなものは、電気が流れる配線部分(パターンとかトラックと呼ばれています)で、そこには電気回路が展開されています。一般的なのは表面と裏面の二面構成で、他の配線と接することもなく、迷路のように裏表を行き来して部品と部品を結んでいます。そして部品が差し込まれる穴の部分には、ランドと呼ばれる糸巻状の円筒の物が差し込まれており、そこへ半田が流し込まれて表と裏とで導通を取っています。部品以外の場所でも小さなビアと呼ばれる物で裏表の導通が確保されてできている、そんな pcb基板の細かい部分まで再現してみたいと思います。

 そうです、今回はこれまでと異なった方針で作業をしています。そこに参考になる PCB基板があったので丸写しにしたのではなく、データシートと部品の写真を見ながら電子部品を一つずつ C4d Lで 3Dにして、頭の中にある回路図に沿って組み立てました。


 ところで、なぜそんなに熱いのか?

 理由は簡単、仕事で本物を作っているからです。回路図や回路構成は頭の中にあります。なのでとことんこだわってリアルにしました。もちろん、シルク図(表面の白文字)やレジスト(面のコーティング)も、配線パターン間のクリアランスや角度までも現実に近い形になるように挑戦したつもりです。

 回路構成と部品の説明は省きます。興味のある方はトップページでやっていますのでそちらをご覧ください。

 これが完成した動画です。





 地獄の一丁目……。
 実物と同じ部品点数で、かつリアルな寸法を維持せよ。

 まず、部品は一から作っていくのですが、同じ物はインスタンス化しました。こうすることで PCへの負担を減らすだけでなく、修正は基となった親だけに絞られますので、とても楽になります。
 本物の電子基板を作るのではなく 3Dアニメーションですので、適当に部品を減らそうかとも思ったのですが、やはり知る人が見た場合、手抜きがバレますし、仕事としてやってきた プライド が許しませんでした。
 一部に余計な回路を突っ込んだり、部品を抜いたときのことを考えて下に隠れた配線パターンまで引いたおかげで、最終的に作ったパーツは 36種、表面のパターンもほぼ本物。その上に実装されたのは 100点以上となってしまい、想定よりも多くの時間を費やしてしまいました。

これが完成基板です。


レジストの色(半田除去剤)は記憶にある色にしました





 基板に使う部品を基となる形状別に区分けすると次の 9種類です。

【1】直方体の組み合わせ
【2】円柱
【3】螺旋と回転ジェネレーター



【4】カプセルと円柱
【5】円柱と立方体
【6】円錐とデフォーマ



【7】直方体のエレメント化 
【8】スプラインから押し出し  
【9】複雑なスプラインから抽出



 地獄の二丁目……。
 テクスチャにも手を抜くな。


 電子部品の表面には、たくさんの数値や文字、あるいは記号が書き込まれています。これらはデザイン的な理由よりも、型番や数値でその部品の機能が決まります。加えてそれがその部品の特徴を表すことにもなりますので、リアルにこだわるのならここも正しく再現することにしました。


 それではメイキングの詳細をご覧ください。すべてこれまでやってきたたくさんの技法の組み合わせでできています。




【1】直方体の組み合わせ

写真の部品は直方体(長方形の立体物)を基にしています。

 特殊な形に見える部分もありますが、すべて単純なプリミティブなオブジェクトや、スプラインで作ったクローズドパスを押し出して、その形を【抜き型】としてジェネレーターのブールで切り取っています。

 写真の部品はいろいろな形の【抜き型】で穴を空けたり、切り取ったりしています。4桁の LED表示器 の『8』の字の部分もスプラインで作った【抜き型】でほんの少しへこました中に、白色のマテリアルを貼ったオブジェクトを埋め込んでいるだけです。

 手前の左にあるキャラメルのような 部品 は、直方体の上面にフィレット(=角を丸める機能)を施した厚みの少ない直方体を埋め込み、その上面に投影法を【平行】にしたテクスチャを貼り付けています。そしてその面の左肩にも特殊な形をした【抜き型】を当てて切り取ったところに、フィレットを施した円柱が差し込まれています。

 手前右端のタクトスイッチも、細かい【抜き型】を利用した銀色の薄い直方体が上面にうめこまれており、その四隅にはフィレット付きの円柱が差し込まれています。


 奥にある放熱板は取り付けられた電源 IC(3端子レギュレータ)から出る熱を逃がすための物で、表面積を広げる工夫がされたアルミ製のものです。熱が出る部品にはこのようなものが取り付けられています。

放熱フィンのデコボコはバンプチャンネルに縞模様を当てました。



【2】円柱

電解コンデンサ三種です。基本はフィレット付きの円柱を基にして、


エレメント化してクビレ部分だけ選択してすぼめます。

下部のへこんだ部分はこの円柱をエレメント化(ポリゴン化=編集可能状態)したあと、その部分だけをリング選択して【座標マネージャ】で【サイズ.X】と【サイズ.Z】を適度に小さくしたものです。OMのサイズ値を変更すると、円柱その物が変形しますが、エレメント化したものは【座標マネージャ】で変形できるようになります。
 テクスチャは【投影法】の『円柱』で貼り付け、テクスチャモードで貼り付けるテクスチャのサイズや位置を調整します。


【3】螺旋と回転ジェネレーター

これはチョークコイルと呼ばれる部品で、通常は今回のような回路では使用されないものですが、この特異な形は鳩くんのオモチャにもってこいだったのと、こういうものをどうやって作ればいいか意外と頭を捻りましたので特別に作ってみました。

 黒いフェライトコアに巻かれたコイルは、そのままズバリ螺旋形です。スプラインツールの中にある『らせん』と書かれたものを使いました。【属性マネージャ】の【オブジェクト】の欄にはパラメータがたくさんありますが、触ってみればすぐに納得です。できた『らせん』のスプラインを円形のスプラインでスイープして立体にしたあと、コイルの中心に黒色の円柱を突っ込んでフェライトコアのできあがり。

 少々ややこしいのはドーナツ状になったコイルです。

 まず真っすぐに伸びる『らせん』のコイルを作ったあと、デフォーマの【屈曲】を掛けます。屈曲オブジェクトの 【R.P】を『90°』にして【強度】を『360°』にしてリング状にました。

上の写真では、銅色のコイルとドーナツ状のフェライトコアの構造を示しています。
 写真では、使用しているデフォーマの【強度】を『270°』で止めたコイルです。数値を『360°』にするとちょうど一周になります。
 また、黄色のフェライトコアは回転オブジェクトを利用しました。回転の基となるスプラインは、四隅を丸めた正方形です。それを回転ジェネレーターで立体にしてあります。ドーナツ状にするために、正方形は回転ジェネレーターの中心軸から離すのがミソです。


【4】カプセルと円柱

抵抗は 1/6Wタイプをイメージしました。基となる形状はプリミティブのカプセルです。抵抗値を表す色の帯は、下の写真のようにマテリアルのカラーチャンネルでグラデーションを利用しました。

LEDはカプセル型を立方体の【抜き型】で下半分を切り取って透明の質感を出すためにマテリアルの【透過】チャンネルをオンにしています。LEDの内部には 発光チップと電極、さらにワイヤボンディング部 まで作ってあります。



【5】円柱と立方体

小型のトランジスタは円柱の一部を立方体を【抜き型】にして前部を切り取りその面だけにテクスチャの型番を貼り付けました。パッケージデザインは全て Aiで作って、pngデータに変換しています。
 リード線(部品の足)はスプラインでリード線の形を作り、それとスプラインの四角形でスイープを掛けています。


【6】円錐とデフォーマ

意外と手間がかかったのはパスコンやセラロックです。米粒のように丸みを帯びたフィレットや、円柱を丸くかたどったり、とにかく丸みに注意して作りました。リード線を保護する形状は円錐を基本にしてデフォーマで変形させています。


【7】直方体のエレメント化 

抵抗アレイ系は薄い直方体を作り、長い辺に対して細かく分割線を入れておきます。それにフィレットを掛けて丸みを作ったあとでエレメント化します。

エレメント化したらループ選択かリング選択で下半分を選択、座標マネージャでサイズを大きくしてぽっちゃりと膨らまします。次にリード線とリード線の中間のエッジを 8カ所選択してその部分をへこまして抵抗素子が埋まっているかのような形を作ります。最後はテクスチャを貼ります。【投影法】の『平行』でもいいのですが、これだと抵抗アレイの裏側にも文字が出てしまいますので、テクスチャの面積分の表面ポリゴン(多角形な面)を選択して、そこに【投影法】の『平行』でテクスチャを貼り付けます。好きな場所へテクスチャを貼る方法は任意のポリゴンへテクスチャを貼るをご覧ください。


【8】スプラインから押し出し  

DIP(Dual Inline Package)タイプの ICは、スプラインで下のような形を作り、

それをパッケージの長さ分スイープで引っ張って角に丸みを付けた立体物にしてボディとします。

続いて ICのピン(=足)です。これはこれまでのリード線とは違いだいぶ複雑な形をしています。 L字型に曲がった平たいもので、数も多いのが難点です。
 数の問題はインスタンス化でしのげるとしても、L字型の部分が気になります。でも厚みが 0.25mmで、長さも 5mmに満たない小さなものですので、スプラインの押し出しを使った 1工程で作ることにしました。

 スプラインで作ったクローズドパス(=形をかたどり閉じたパス)を押し出して立体を作る方法は平たい物に限るのですが、少しぐらいなら前後に曲げることが可能です。曲げすぎると先端が細く伸びて刃物みたいになりますが、幸い ICのピンはボディの中に差し込まれて見えませんので好都合です。

 まず、4面ビューの【前面】ビューの中で全体の形をスプラインで作ります。下の写真の右側のビューです。

上部の 2点(前面ビューのピンク枠の 2点)を奥へ曲げますので、先に曲げ始めとなる別の 2点をその下に打ちます。
 スプラインに追加のポイントを打つときは、スプラインペンツールを選んでおき、OMのスプラインを選択してからマウスをスプラインの上に持って行くと白くハイライトしますので、打ちたい場所で『ctrl』を押しながらマウス左クリックでポイントが打たれます。もしマウスがスプラインに触れてもハイライトしないときは スプラインに追加のポイントが打てないをご覧ください。

 準備ができたら曲げの作業に入ります。先ほどのピンク枠の 2点を選択します。2点同時でないと上手く曲がらず歪みの原因になります。
 選択したら隣の【左面】ビューへ移って、緑枠の点を z軸方向へ移動させます。この動きを【前面】ビューで見ると、2点が同時に同じだけ奥へ移動したことになります。


【前面】ビューでは変化はありませんが、【左面】では曲がっています。
 ただし角に丸みがありませんのでそれを作ります。



 次の写真です。

曲げようとするポイントを【前面】ビューで 2点同時に選択して、どちらかの上でマウスの右クリックをして、出たメニューから【ソフト補間】を選んで曲線に替えます。

 続いて【左面】ビューで曲がり具合を調整してひとまずおしまい。他にも角を丸めるには【ソフト補間】のあと【面取り】を行ってもいいのですがそれはまた別の機会に。
 これに【押し出し】ジェネレーターを掛けて、厚みを直して完成です。

 スプラインを押し出して平たいものを作る時は、各点が同一平面上にないと押し出したときに歪みが出ます。また曲げ始め点として打った 2点だけは【前面】ビューで見て高さにばらつきが無いか【座標マネージャ】で Y軸の差分値が『0』かを確認します。差分があると歪んで曲がります。この辺りは 【スプラインペン】で歪まない真っ平な平面を作りたいをご覧ください。


 下の写真が全ての ICのピンです。同じ部分はインスタンス化して複製した物を並べます。

曲がった先が尖っていますが、ICに差し込むので気にならないと思います。ICの四隅は別の形のピンが使用されていますのでこれも作りました。他にも形の違うピンがありますのでそれぞれ作っていきます。


 完成したら ICの側面に規則正しく配置します。この形の DIPタイプは、ピン間が 2.54mmと決まっていますので、揃えておかないと他の ICや部品とのつじつまが合わなくなります。

さらにディティールにこだわります。プラスチック材で作られた ICには製作時にできたくぼみや、基本となる 1番ピンを示す丸いヘコミ、1番ピンがある端を表す切り取り部分などがあります。これは意外とそのICの顔となりますので、これも付け足しました。

これらはすべて【抜き型】を利用しています。ヘコミやくぼみに合わせた形を作り、それらにジェネレーターの【ブール】を掛けています。
 複数の【抜き型】で一つの物体をブールするには、抜き型となるほうのオブジェクトをヌルの階層へ入れてからブールするとまとめて切り抜きしてくれます。簡単に説明しますと、

写真はこの ICの OMの状態です。『ブール IC』と書かれた階層に注目してください。そのすぐ直下の階層にある『押し出し IC』が押し出しで作った ICのボディです。同階層に続いて『抜き型』と書かれたオブジェクトが各種の抜き型をひとまとめにしたヌルです。そしてその下の【属性マネージャ】の状態です。中でも重要なのが【ブールタイプ】です。『 Aから Bを引く』となっています。これは OMの【ブール IC】階層の直下、ピンク枠を【A】として、その次、緑枠を【B】と示しています。ICのボディ(押し出し IC)から抜き型を引く=消す、ということになります。

 ボディの表面に【投影法】『平行』でテクスチャを貼ったあと、テクスチャモードでテクスクチャの位置を調整して、やっと IC類が完成です。

これで部品ができあがりました。でもまだ終わりではありません。ここまでは役者をそろえていただけの話で、これから舞台となるプリント基板を作ります。



 その前に……。
 少し話が逸れますが、本物の配線パターンを這わすには PCBCADで作業します。これ専用のアプリですので、別の回路のパターンと決して交わらないようになっています。無理に交差させようとしてもパターンはクロスしません。またどんなに乱暴にパターンを引いても、別の回路のパターンとのクリアランス(隙間)も設定以上に近づくことはありません。方向を切り替えるときも、常に 45°に折れ曲がってくれてとても便利なのですが、C4d Lは PCBCADではありませんから、そのような機能がありません。もちろんそんなものを求めるのはお門違いですので、ここは手作業でやっていきます。

 部品のピンとピンの間は、ほとんどの物が 2.54mm間隔になっていますので、すべて同じにしていきます。中にはピン間のピッチが異なる部品もありますのでデータシートを見て正しく回路図どおりに配線していきます。正しく配線することに意味はないのですが、完成時の迫力が違いますので、あくまでもリアルにを貫き通しました。

 配線パターンとなるラインはスプラインを使って一筆書きでの要領で作っていき、それを厚み『0』の押し出しジェネレーターで平面オブジェクトにして、それを厚さ 1.6mm、横 219mm、縦 74.5mmの直方体を基板本体として、その上に貼り付けていきます。ただ一度にすべてを作ることは不可能ですので回路別に作成しました。

 例えばこれは GNDラインです。

GNDはグランドと呼ばれる電気回路の基準電圧が広がるエリアですので、ここが貧弱な作りをしていると誤動作の原因になります。そのためできる限り広く大きくが基本です。その部分だけをこのようにスプラインで作り厚みの無い平面としてあります。
 配線パターンのオブジェクトも相当な数になっています。それから部品の足が刺さるランドや、表面から裏面へ配線をつなぐビアなども小さなドーナツ状の円柱で作って、すべてインスタンス化してあります。もし C4dにインスタンス化の考えがなかったら、パソコンから煙が出ていたかもしれませんね。



 できる限り現実にこだわってして、かつプリントパターンを作成するときのルールに従って拵えたのがこの基板です。


【9】複雑なスプラインから抽出

目を疑うリアル感です。C4dの質の良さが妙実に表されています。基板屋さんに見せてもおそらく疑うことなく、ガラスエポキシ基板だと信じると思います。
 ただ、大きく近づくと、部品の足が刺さるランドの輝きが作りものっぽいのはまだ精進が足りないせいですかね。先は長そうです。


 部品を差して完成です。




【20】PCBを作る  やっとこさ終わりました

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