お品書き
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- ・ 回転は迷宮への路 完結
- ・ マテリアルと投影法 その1
- ・ マテリアルと投影法 その2
- ・ マテリアルと投影法 完結
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回転は迷宮への路 HPB回転を理解する(2)
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前回で回転のさわりをやりました。今回は AEとは異なる回転システムに翻弄され続けた数週間のザマを暴露いたします。
C4Dでの回転処理は HPBと呼ばれる、AEの XYZ軸回転とは異なる仕組みです。
と言い切れるようになったのは、以下の経緯があったからです。
この写真をご覧ください。
回転ツールをオンにすると、3D軸の矢印が回転バンドと呼ばれる赤、緑、青の帯に切り替わります。X軸を中心に回転させるのなら赤い帯をマウスで上下にドラッグします。写真のオレンジの矢印部分です。
まだ回転前なので属性マネージャの数値はすべて『0』です。
赤い帯をマウスで上へドラッグすると、オブジェクトは後ろに倒れていきます。それにつれて属性マネージャの R.Pの数値が変化します。
「X軸を中心に回転させると R.Pが変化するってことは、R.Pって X軸回転のことかな?」
C4d Lを始めていくつか疑問を持ったことはありましたが、ここだけはまったく理解不能でした。なぜなら、緑のバンドを回して Y軸回転させて変化する数値には R.Hの文字が。Z軸のほうは R.Bと書かれているのです。
やっていることは軸回転なのに……。
「これはどう考えても HPRと XYZの軸回転は同じものだよな。でもなんで HPBなんだろ?」
こうやって謎を持ったまま作業を続けること数日後……。
はたと困ったことが起きたのです。寝転がった赤ネジくんを横に転がそうとしたとき、にっちもさっちもいかなくなりました。
それを再現するとこんな感じです。
横倒しになった二つの赤ネジくんを、ドラム缶を転がすように回転バンドをドラッグして転がしたアニメーションです。
このアニメーションを再生すると、右側のほうだけが予想外な回転をしてしまいます。
なぜこのようなことが起きるのかさっぱり解りません。AEでもどうしても回転できない方向というのがありました。この場合と同じように どの軸を回転させても思うように回らないときがあって、そんなときは親にしたヌルを利用して、その場を切り抜けていましたが、この現象の意味が解らなくて、ずっとモヤモヤしていたのは確かでした。
疑問は二つ。
「同じ向きのオブジェクトを同じ方向へ回転させたのに、なぜ違う動きをするのだろうか?」
もう一つは、
「キーフレームアニメーションさせないときは、どちらもドラム缶を転がす回転なのに、なぜアニメーションさせた途端突拍子もない回転を始めるのか?」
疑問の壁は大きく、どう乗り越えていけばいいのか皆目見当もつきません。でもここは踏ん張りどころ、これを解決しないと 3Dでの回転処理をずっとごまかしたままやり続けることになる、と自分を奮起させて、かつ想像力を働かせて調べることにしました。
まずこの二つの回転のどこが違うのか。赤ネジくんでは解りにくいので、次の写真のようなものを作って調べました。
ふつうは個々のオブジェクトの軸を同時に表示させて見比べることができませんので、フォトショップで合成写真を拵えてあります。
各オブジェクトの色付きの四角い柱は、それぞれ緑は Y軸、赤は X軸、青は Z軸を表し、自分の軸がどこを向いているかを表現しています。例えば左は垂直方向が Y軸になっていて、水平方向が Z軸、奥行き方向が赤の X軸です。
そのオブジェクトを回転ツールで、左は X(赤)軸、右は Y(緑)軸をセンターにして、それぞれ時計回りにバンドをドラッグして回転させた映像がこちらです。
先ほどの赤ネジくんと同じように、右側がおかしな回転をして、R.H、R.P、R.Bの数値が異常な変化をしていますが、左は正しく X軸を中心に時計回りになっています。数値の変化も R.Pのみです。
この二つを見比べると、異なるのは軸です。もう一度この写真をご覧ください。
おかしな回転をする右の Y軸が 90°倒れています。Y軸が倒れると連動して Z軸も倒れます。
このオブジェクトを使って、異常回転するオブジェクトを回転ツールで回さずに、R.H、R.P、R.Bの値を順に変化させてみることにしました。
まずは両方の R.Hを +30°してみます。
両方とも水平に回転しました。
「左は緑のY軸を中心に回転。これだと R.Hの Hは やっぱり Y軸回転だ」と結論を出したいところですが……。
「でも右のオブジェクトは、緑の Y軸に沿って回転していない。青の Z軸を中心に回転している。となるとやっぱりオブジェクトの軸に合わせた回転はしてない」
今度は否定的。でも――。
次の写真です。
R.Pを変化させると、右は想定したとおり X軸(赤)をセンターに前後回転。左の X軸はこちらを向いてますので、それを軸にして側転動作。これで両方とも X軸回転です。
「XYZ軸を基準に回っているときと、そうではないときがあるのはどういう理由からか。R.H、R.P、R.Bと書かれていることが、その答えなのだろうか?」
首を捻って唸っていても進展しませんので、とにかく元の状態に戻して、今度は R.Bをそれぞれさっきと同じ +30°だけ動かしてみます。 R.Bは Z軸回転のはずです。
この結果を見て、頭が爆発炎上。まったく意味不明に陥ったのです。
そうです。両方の R.Bを +30°にしたら、左は 青いZ軸を中心に回転しましたが、右のオブジェクトを見て目をむきました。またまた Y軸回転をした時と同じ垂直方向を軸にして回ったのです。R.Hを変化させても、R.Bを変化させても 垂直軸回転……。
「な~んじゃ、これ?」
いったい何を信じて回転アニメーションを作っていけばいいのか、想像だにしていない回転を目の当たりにして、愕然となりました。
しかも。
「これだと右のオブジェクトは ドラム缶転がしができない! だから異常回転したんだ」
これで解ったことはただ一つ。
「 HPBは オブジェクトのXYZ軸を中心に回転していない!」
気づくのおそ~い。
「じゃあ HPBってなに?」
やっと自分が間違っていたことに気づいたのです。
回転は XYZ軸で回すものと AEで焼き付けられた考えのおかげで、激しい混乱に陥った先に現れたのは、複雑怪奇な迷宮だったのです。
次回、【回転は迷宮への路、完結】で解決するのでしょうか……。